BGMが“うるさい”と言われる理由ポッドキャストを聞いていて、「内容は面白いのに、BGMがずっと鳴っていて疲れる」と感じたことはありませんか?実は、ある程度の再生数を超える番組ほど「BGMがうるさい」「聞きづらい」といったフィードバックを受けやすくなります。これは、リスナーの多くが“気になるけれど、わざわざ言うほどではない”と感じている、いわばサイレントマジョリティの違和感です。制作者側が気づかないまま、BGMが“リスナー離脱”の原因になっているケースも少なくありません。なぜBGMを入れるのかでは、なぜ多くのポッドキャストでBGMが使われているのでしょうか。理由としては、以下のようなものが多く挙げられます。無音を避けて雰囲気を保ちたいノイズや環境音を目立たなくしたいなんとなく「FMラジオっぽく」カッコよく聞こえる間を埋めてテンポよく感じさせたいたしかに、FMラジオではBGMが常に流れている番組も多く、それを参考にするケースは自然な流れです。しかし、ラジオは5分程度のコーナー単位で構成されているのに対し、ポッドキャストは30分以上の長尺が一般的です。この長さで同じBGMを鳴らし続けると、単調な繰り返しがリスナーの集中力を奪い、耳の疲労を招くことになります。ノイズを消すために入れたBGMが、いつの間にか“ノイズそのもの”になってしまう。これは、制作者が気づきにくい落とし穴です長尺番組での「BGM疲れ」現象海外でも、BGMが長時間続くことによる“耳疲れ”や“理解度低下”に関する研究が進んでいます。たとえば音声処理分野の研究では、背景音を下げることでリスナーの「聞く努力(Listening Effort)」が減少することが示されています。つまり、BGMが声に重なりすぎると、リスナーは知らず知らずのうちに疲れを感じてしまうのです。また、心理学的な観点からも「バックグラウンドミュージックが注意を分散させる」ことが指摘されています。BGMが一定のテンポや旋律で繰り返されると、脳が“処理すべき音”として認識してしまい、本来集中すべき話の内容が入りづらくなるのです。その結果、リスナーは「なんとなく聞いているけれど、内容が頭に残らない」という状態に陥ります。特に情報量の多いビジネス系・教育系の番組では、この影響が顕著になります。海外でのガイドラインから学ぶ欧米のポッドキャスト制作ガイドでは、BGMについて「少ない方が良い(Less is more)」という考え方が主流です。音声編集ソフト Descript の公式ブログでも、以下のように説明されています。“Don’t feel like you have to add a ton of music across every episode.Use music to break up scenes or segments. Choose music that doesn’t compete with the voices.”(全編に音楽を入れる必要はありません。シーンの区切りに使い、声と競合しない曲を選びましょう。)つまり、BGMは“雰囲気を支えるための裏方”であり、決して主役ではありません。特に英語圏では、声を中心に据えた編集方針が一般的で、音楽はごく短いブリッジやジングルとしてのみ使われるケースが多く見られます。「BGMなし」は本当に寂しいのか?とはいえ、「BGMをなくしたら殺風景になるのでは?」という声もよく聞きます。実際、BGMには適切に使うことで多くのメリットがあります。冒頭で流すことで「あの番組が始まる!」という脳内スイッチを入れられるエンディングで流すことで「そろそろ終わりだな」と感じさせられる話の切り替え点で短く入れると、テンポが生まれ耳のリフレッシュになるこのように、BGMは「常時流すもの」ではなく、「場面転換を演出するもの」として使うのが理想です。たとえばオープニングで1~2分、エンディングで1~2分、あとは話題の切り替えで10秒ほど。長くても3分以内で収まる程度がちょうど良いバランスでしょう。PitPaが導き出した「最適なBGM音量」PitPaでは、これまで数千本におよぶポッドキャストを制作してきました。その中で、BGMの音量設定がリスナー体験に大きな影響を与えることを実感しています。BGMが少し大きいだけで声が聞き取りづらくなり、逆に小さすぎると効果が感じられない。そのバランスを追求した結果、次のような基準にたどり着きました。🎧 PitPa推奨・BGM音量ルール1.音声はコンプレッサーをかけて「−15〜−9dB」の範囲に収める2.BGMが声と重なる部分は「−36〜−33dBピーク」に調整する3.BGMのみの部分(オープニング・エンディングなど)は「−27〜−20dBピーク」にする4.最終段階で「ラウドネス一致」を実施(−16LUFS/最大トゥルーピーク−6dB)これらは、Adobe Auditionなどの音声編集ソフトを基準にしています。上記を守ることで、声を主役にしたまま、BGMが雰囲気を支えるバランスを再現できます。なぜこの数値なのか声の音量を−15〜−9dBにする理由は、一般的な会話音声として自然でありながら、スマートフォンやカーオーディオなど、どの環境でも聞き取りやすいからです。また、BGMのピークを−33dB程度に抑えると、声の存在感を損なわずに、ちょうどよい“空気感”を作り出せます。逆に、−30dBを超えると急にBGMが前に出てきて、スピーカー再生時に声がこもって聞こえることがあります。一方で−36〜−39dBに下げすぎると、ヘッドホンでは良くてもスピーカーでは“ほぼ聞こえない”状態になります。このように、−33dB付近が最適点であることが、実際のリスナー検証でも確認できました。参考音源の比較PitPaでは、BGM音量の違いを体感できるよう、サンプル音源を用意しています。%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FQ9ecF1ZAuMM%3Fsi%3D7MkVnirghgZa8olX%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eこのように、−33dB前後が“声の主張とBGMの存在感が両立する”ラインです。編集者自身が複数の再生環境で確認しながら微調整するのが理想です。編集時のポイントBGMの音量バランスを整えるうえで、次のようなポイントも重要です。BGMの出入りをフェードイン/アウトで自然にする急に入ると違和感を与えるため、1秒程度かけてゆっくりフェードさせましょう。BGMの音域を“声と被らない帯域”にする中高音域(2〜5kHz)に強い楽曲は声と干渉します。ピアノやストリングスなど中音中心の楽曲が相性が良いです。繰り返しフレーズが短すぎる曲を避ける同じメロディが数十秒おきに繰り返されると、脳が“飽き”を感じます。ジングルや効果音はメリハリをつけて短くセグメント転換時にだけ軽く入れることで、耳がリセットされます。このような“間のデザイン”ができている番組は、長時間でも聞き疲れしません。BGMを“控えめにする勇気”多くの制作者が「BGMを入れないと不安」と感じがちですが、実際には、声がクリアに伝わることこそ最大の魅力です。BGMは“寂しさを埋めるもの”ではなく、“番組の表情をつくるスパイス”として位置づけましょう。「BGMを減らしたら物足りない」ではなく、「声が際立つようになった」と感じられたら、それが成功です。まとめポッドキャストでは、BGMを“全編で流す”よりも“場面で使う”ほうが効果的。BGM音量の目安は「声との重なり時−33dBピーク」が最適。高音・単調なBGMは避け、フェードと間を意識して編集する。再生環境ごとに聞こえ方が異なるため、複数環境でチェックする。目的は「声を届けること」であり、BGMはあくまでサポート役である。この記事を書いた人富山真明株式会社オトバンク、ポッドキャスト事業PitPa責任者2018年ポッドキャストで企業のブランディング・マーケティングを支援する「PitPa」創業。2024年オトバンクに事業譲渡。20年以上のインターネットコンテンツビジネス経験を基盤に音声ビジネスの可能性に着目し主に企業のポッドキャスト番組制作を担当。2000本以上のポッドキャスト制作に関わる。「無理なく、楽しく、末永く」をモットーに、高品質な音声コンテンツ配信を支援。Xでは音声を含むコンテンツ制作、マネタイズに関する知見を日々更新中。ポッドキャスト番組「で、売上になるんですか?~今すぐ使えるマーケの話」も定期配信中。https://x.com/tomi_podcasthttps://open.spotify.com/show/4lYFFmNi4T5nJjyYwYc0UF■疑問・質問なんでも募集中!音声を企業のマーケティング活動に取り入れたい方や、企業のブランディングとして音声コンテンツを作りたいと考えている方、質問などがありましたらお気軽にお問合せください。企業ポッドキャスト制作に関する資料ダウンロードはこちらから👇️その他具体的な案件の相談や疑問相談はこちらから👇️